なぜ「ケン・イシイ」なのか?

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      オサム・サトウが手がける伝説のゲーム『LSD』サントラがリヴァンプ!リリースイベント開催

      1998年にリリースされ、世界中から熱狂的人気を得るビデオゲーム『LSD』のサウンドトラックが、発売から20周年を記念して新たにリヴァンプされ4月11日にリリースされる。TENORなどの人気テクノアーティスト達がREMIXを手がけている。

      新作アルバム『RELAXER』のジャケットやプロモーションムービーで『LSD』の映像を使用するなど、リアルタイムではない世代からの注目も高まっている。

      誰がDJカルチャーを破壊してきたのか?

      親しんでいるどれだけの人に共有され、必要とされているのだろうか。 たしかにEDMは日本でも数年遅れでブレイクし、何万人ものオーディエンスを集めるフェスが林立するようになった。巨大な邦楽フェスでもDJのステージは必ずと言っていいほど存在する。

      しかし、そこには従来のDJカルチャーとの大きな断絶があるのは間違いない。SNOOZER〉というパーティを続けている田中宗一郎に、幅広い現場を実際に体験してきた当事者として、そして日本と世界の音楽シーンを論じ続けてきた批評家として話してもらった。 ――2つの時期に分かれるんですけど、最初は2006年です。その後、しばらく付き合いがなかったんですが、2011年から1~2年間、また手伝わせてもらうようになりました。

      同時に、後にエレクトロと呼ばれるような動きもネットでは細かくチェックしていました。

      僕は2003~2006年が一番現場に行きまくっていた時期です。UNIT、ageHaのどこかに行っていて、はしごも当たり前でしたね。

      たまたま時間のあいた週末にさっと思いつきで遊びに行きたいなと思えるクラブやパーティの数がすごく減ってしまったように感じる。って感じで、クラブに気軽にでかけるという感じだったから。だから、以前とはいろんなものが変わってしまった。1994年に新宿リキッドルームが出来たのがやっぱり大きかったんだと思う。いや、体感としてはホントそんな感じだったんですよ。下手すりゃ、首都圏近郊に暮らしていてクラブ初体験がリキッドだった人は何万人もいたんじゃないかな。リキッドってビルの7階にあって、クラブがオープンした数時間はお客さんはエレベーターを使わずに階段で上らなきゃなんないんだけど、毎週末金曜や土曜は日付が変わっても、ビルの入口から歌舞伎町の中にずっと行列が出来るくらいだった。いろんな要素が多発的に組み合わさってこその結果なのは間違いないんだけど、やっぱり何よりも電気グルーヴと石野卓球の存在ですよね。

      本当はそれ以前に当時の基盤を作って、それを支えたいくつもの名前を挙げなきゃならないところなんだけど。これは海外のドラムンベースのDJなりアクトが軸だったから断続的なときもあったけど、ほぼ毎回足を運んでたと思う。個人的には数えるほどしか行ったことはないんだけど、毎月のレギュラーでかなりの期間、毎週1000人以上集めてた。レジデントだったYO-Cが無敵のスーパースターDJだった時代。VENUS〉の久保憲司がオーガナイザーを買って出てくれて、会場をリキッドルームに移すんですよ。仲くんが〈エスカレーターレコーズ〉を始めてまだ2年も経ってない頃で、全国でDJしまくってた頃じゃないかな。自分自身、毎週末2つから3つ、4つのクラブのはしごは当たり前だった時代だし、ピチカートの小西さんとかもDJしまくってた時代だから、今よりシーン全体がクロスオーバーしてたんじゃないかな。SNOOZER〉がクラブ初体験で、その後、ハウスDJになった子たちとかがやまほどいたのね。

      いずれにせよ、毎週末そういったいろんなジャンルの、しかも1000人キャパの大きなパーティが開催されていたんです。90年代の前半まではロックばかり聴いてたわけですよ。その後、毎週のようにクラブ遊びをする中で、彼の言葉が認識としてではなく体感として理解することが出来た。クラブでの体験は、バンドが演奏する音楽をオーディエンスが受け取るという従来の形とは根本的に違ってた。すべてのきっかけはDJが選んだレコードだったとしても、音楽を媒介にして、そこにいる全員があるひとつの空間と時間、ムードを作り上げる。クラウド全員が確かにかけがいのないパズルのピースなんだという感覚。 ――50年代、60年代からの続くロックのカルチャーにはなかった新しい価値観がそこには感じられた。もちろん俺だけじゃなく、むしろ当時のティーンや20代のユースがそれに先んじて、その新しい価値観の中に飛び込んでいったんだと思う。だからこそ、彼らが日本のシーンを作ることになっていったんだけど。 ――それというのは、それ以前のディスコやクラブの世界にはなかったものだ、と。俺も〈GOLD〉には遊びには行ってたけど、感覚としては社交場っていうか、たまり場って感覚だったから、俺がわかってなかっただけなのかもしれない。90年代半ばというのはもっと爆発的な拡がりがあったんだよね。

      ――つまり、2010年代のEDMのような特定のトライブ限定のカルチャーではなかった、と。そうした価値観の中心にあったのが、オールナイトのパーティという形式だったんだと思う。繰り返しになるけど、音楽がすべての中心にあって、主役はクラウドのひとりひとりで、演者であるDJはそれを手助けする司祭にすぎないっていう価値観だね。

      少なくとも90年代当時は、そこで流れる音楽がテクノであろうが、ハウスであろうが、ドラムンベースであろうが、たとえロックであったとしても、何かしらそこから派生した共通の価値観をシェアしようという気運が間違いなくあった。たとえば、当時の石野卓球はとにかくクラウドがDJブースの方を向いて踊るのが嫌で嫌でたまらなかったんですよ。だから、卓球はわざわざフロアからDJが見えない場所にブースを作ったりとか、いろんな試行錯誤をしてた。彼は自分がDJをするとき、よほどのことがない限り、自分の最大の代表曲である『エクストラ』は使わなかったんですよ。曲そのものの音響的な効果よりも、クラウドひとりひとりの記憶にダイレクトに作用してしまう。その瞬間にそれまでのプレイで彼が丹念に積み上げてきたクラウド全体のグルーヴがだいなしになってしまう。だからこそ、その瞬間の光景が本当に最高なものになるんですよ。誰もがそんな風にして、自分が影響を受けたカルチャーの伝統に連なって、それを守り、そこでの価値観を押し広げようとしてた。そのこと自体がリスナーと表現者の関係を更新したという興奮があった。って馬鹿なことを言ってたことがあった ――DJカルチャーの世界では、オーディエンスと表現者が共有する場の空気の作り方だけでなく、時間の感覚もまったく新しいものになった。ほら、保坂一志の小説ってありきたりの日常を描いているだけで、ナラティブ的には何も起こらないんだけど、言葉の繋がりを読み進めていくと、確かに見たことない、感じたことがないフィーリングが自分の中に生まれてくるでしょ。田中フミヤのDJもまさにそうで、特に何も起こっていないと同時に、常に何かが起ってるの。田中フミヤがDJについて書いているブログも保坂一志の小説と同じくらいのアート性があるんですよ。自分がDJをするときに何を考えているのか、実際にブースの中でマイクをつけてそれをしゃべりながらDJする、それを動画にして残すっていう。あれを見ると、パーティを生み出すきっかけはDJにあるにはあるんだけど、主体はクラウドでもあり、DJでもありつつ、その対話の中で起こる偶然によって何かができあがっているっていうのがすごくよくわかる。卓球が今もリキッドルームで年越しのパーティをやっているじゃないですか。大晦日の夜から正月の昼過ぎ――下手したら夕方4時くらいまで続くっていう。昼過ぎになるとさすがに200、300人しか残っていないんだけど、フロア全体がホントすごい光景だったんですよ。そこにいる自分も含め、まるでクラウド全体がひとつの生き物みたいっていうか。一人の政治家や思想家の意志とか、システムではなく、いろんな意志や意識が奇跡的に混ざり合って、あるひとつの時間と空間ができあがる。だからこそ、ボアのアイちゃんのDJとかも大好きだった。例えば、ハウスとテクノ、テクノとトランスのDJのミックスの仕方自体、まったく別のスタイルとテクニックでしょ。乱暴なレジュメになっちゃうんだけど、たとえばハウスに適したミキサーはウーレイだよね。

      EQがこんなにデカくて、微細にエフェクトを調整出来る。これも乱暴な比較なんだけど、ハウス、テクノ、トランスのパーティとの違いというと、ハウスはどこかに沸点があるのではなく、ずっとグルーヴが続いている心地よさがある。トランスの場合は、よりドラッグが重要になるから、ブレイクでビートがなくなったときにむしろ一番盛り上がる。それは単純な話、食ってる連中がビートレスになったときにビートに対する飢餓感が生まれるから。テクノでオーディエンスの歓声があがるのは、二つの曲のミックスで別の曲ができあがったときだよね。

      それ以降の、エレクトロやEDMのパーティだと、どこで盛りあがるかと言うと、曲と曲がミックスされて、完全に曲が切り替わったときでしょ。しかも、EDMのトラックというのは、1曲の中にビルトだの何だの緩急があるわけでしょ。テクノDJみたく曲をミックスしていくことでセット全体に緩急をつけなくてもあらかじめ曲の中にフロウがあるわけ。ピッチさえ合わせれば、誰にでもできるわけでしょ。まあ、トランスのDJもよく似たものと言えばそうなんだけど、少なくともハウスやテクノのパーティとも何かしら共通するものがあったと思うんですよ。曲が触媒になって、DJとクラウドの対話の積み重ねが時間と空間を作り上げるっていう。 ――特に日本ではそういった価値観自体が力を失いつつあるというか、忘れ去られつつあるような感触があります。ちろん、今でもベルリンやケルンのテクノやミニマルのシーンは健在だし、完全に失われてしまったわけではない。ただそうした価値観が10年前と比べて、特にここ日本だと世間一般にはまったくシェアされていないという実感があるんです。もうひとつ大きな転換を感じたのは、2002年くらいのことで。 ――いえいえ、それを話してもらうのもこの記事のひとつの目的ですから。つまり、ある意味、以前の歴史とは切り離されたものでもあったってことでしょ。月曜日の夜にひとりでクラブの前に並んで、何時間もかけて中に入ったんですよ。しかもティーンから40代までいれば、人種も混ざってる。くんに〈トラッシュ〉の存在だとか、NYの〈DFA〉とロンドンの〈アウトプット〉の関係だとか一切合切を説明して。〈トラッシュ〉以降のエレクトロは、トラック自体の構成や形式が変わったし、DJのスタイルが変わった。最初は思ったけど、ポップスとしては間違いなく斬新だった。それに当時のエレクトロのシーンというのは、日本からもDEXPISTOLSや80KIDZみたいに、DJでありプロデューサーでもある次世代の才能が大挙して出てきた。そういう意味では、本当に重要なムーブメントだった。それに、エレクトロの時代は海外と日本のシーンがリアルタイムでクロスオーバーしていたのも間違いない。一番顕著なのは、EDMのトラックはミニマルのトラックと違って、あらかじめミックスされることを前提にしていないこと。イントロがあって、ビルドがあって、一曲の中ですでに緩急が盛り込まれている。

      そのせいで、以前みたいに数時間のあいだにグルーヴを積み立てていって、大きな緩急を作るのではなく、テンポは同じでもまったくグルーヴの違うトラックが次々とミックスされることが当たり前になった。そのことでトラック単位でいきなり景色が変わってしまう繋ぎのスタイルも当たり前になっちゃった。ただ日本の場合、ちょうどEDMが出てきたときに、風営法の問題もあったでしょ。数年間のすったもんだがあった揚げ句、最終的には風営法が改正されて、クラブが営業できるエリアが設定されたんだけど、エリアや箱のサイズによって認可が下りないところもあれば、下りるところもあった。歓楽エリアに大きな敷地面積をもったクラブには認可が下りたんだけど、小さな資本や個人がやってて、指定されたエリア外にあったお店にはオールナイト営業する認可が下りなかった。それで小規模、中規模のいわゆるオト箱をやっていくことはすごく困難になった。 ――いわゆるハコ客がすべてチャラ箱に移ってしまった、と。一般的なクラブやパーティのイメージって、もう彼らがやってるようなパーティじゃないと思うんですよ。だから、風営法による打撃とEDMブームの勃興が重なりあうようにして、ほぼ歴史が断絶することになったんだと思う。まあ、おおかたとしてはそういうことなんだけど、ここ20年のあいだ、札幌から沖縄まで、いろんな土地にDJとして呼んでもらってたから、それぞれのエリアで改正前と後で風営法がどのように適用されているかをずっと見てきたのね。

      するとさ、エリアごとに所轄の警察がどんな風にクラブを取り締まってるのかっていうのが本当にバラバラなの。いろんな解釈ができる法律がひとつでも議会を通過するっていうのは本当に危険だってことを実感せずにはいられなかった。今の安倍政権のやり方がそうだけど、どんな法律もすごく恣意的な解釈による勝手な運用ができる。俺はやっぱりできるだけオールナイトのパーティにこだわりたいんですよ。TASAKAがやっていた〈LOOPA〉もレジデントは2人だったよね。

      ひとりのDJのセットが45分だの30分だので、一晩にDJが6人も7人もいたら、緩やかな時間と空間のフロウなんて絶対にできない。 ――田中さんが言うところのローマ帝国が作れない、と。音とグルーヴを介したクラウドとの対話なんて気にもしてない。そのためにはオールナイトであることはすごく重要なパーツのひとつなんだよね。

      それか、さっきの10人近いDJがいるときみたく、ずっとピークが続くみたいな時間の流れになっちゃう。まるでずっと『軍艦マーチ』が爆音で流れてて、いきなり最後に『蛍の光』が流れるパチンコ屋みたいになっちゃうのよ。そんな場所に何時間もいれないし、いたくもないじゃん。オールナイトのパーティだと、たとえ途中に帰ることがあったとしても、基本的には朝までここにいるしかないっていう風に腹を括ってる人が大半でしょ。そこに100人なり、200人なりの人間がいるとして、半数から7割は翌日の休日をだいなしにするつもりでいる。

      そうしたひとりひとりの心積もりや心象がパーティ全体の行方を占う重要なパズルのピースなんですよ。テクノのパーティは朝の5~7時頃になると人が減っていったりもするけど、一度ピークが過ぎた後にこそ、独特のコミューナルな感覚が生まれる。そんときの安堵の空気が辺りを包み込むような感じ。思いながらも、それが終わってしまうという喪失の感覚が混じりあうフィーリング。あの絶妙な空気をデイタイムのパーティで作るのは本当に難しい。 ――ただ問題は、もはやそうした価値観そのものが世間一般には共有されていないってことですよね。

      そうなると、俺とかはパーティをやったり、DJをやっている意味がなくなっちゃうんですよ。限られた人数のレジデントDJがフロアと対話を交わしながら、オールナイトで時間と空間を作りあげていくっていうのは本当に特別なことで。たとえば、〈マルチネ〉のtomadくんとかはすごく頭の切れる人だから、早いタイミングでパーティをデイタイムに移行したりした時期もあったでしょ。たとえば、名古屋でやってるフェス〈森、道、市場〉とか本当に最高なんですよ。すべてDIYだし、普段バンドが演奏しないアウトドアで、趣向を凝らしてて。

      ただ、そこに詰めかけてる人たちにとっては、もちろん、そこで鳴ってる音楽も大事なんだろうけど、むしろ普通のライヴハウスだとかクラブじゃないロケーション目当てになってきてる。そういうトレンドも関わっていると言えば、関わってると思う。そう感じること自体、別に悪いことでも何でもないんだけどね。

      まず当時からずっとやってる人の大半はそうだよね。

      京都のHalfbyも自分がプロデューサーであり、DJであることに引き裂かれながらもずっと試行錯誤してる。NOBUは国内でも海外でも評価が高いし、食品まつりも海外で成功している。

      〈Erection〉周りみたいにムードマン以降の影響から始まって、日本のトラップ以降の才能をフックアップする場になってたりとか。現場としても青山のOathだったり、高円寺のグラスルーツだったり、小箱ならではの重要な拠点だってあるし。Iimoriくんのセットは本当に刺激をもらったし、良くも悪くも考えさせられた。60分のセットを一回見ただけなんだけど、いい意味で、2017年を象徴するスタイルだと思ったな。okadadaくんはやっぱり本当に何だってやれるってことだよね。

      fingersっていうユニットを観たことがあるんだけど、ホント完成されててさ。それまでは、ハウスのBPMは120、テクノやトランスのBPMは140前後とかほぼ決まっていた。くんのDJとかもどんどんBPMが変わっていくーーBPM120の曲と、その三分の二の90の曲を見事にミックスしたりとか。田中フミヤがやっていたような発想とは違うけど、決定的に新しかった。そこには分断があるけど、間違いなく新しいスタイルだっていう興奮があったんだよね。

      その中でもokadadaくんはその日の現場やブッキングに合わせて、どんなジャンルのセットもやれる人でしょ。今の若手のDJは本当に器用だし、一回や二回セットを見ただけじゃ、判断つかないところもあるんだけど、この前観たIimoriくんのDJはセットの前半はBPMが70もしくは140で、その中にミーゴスの『Tシャツ』のエディットとかが入ってくる感じだったのね。

      ミニマルのDJみたくリズムの刻みを少しずつ増やしていったり、とかじゃない。ただこれは完全に老害発言だけど、6時間の大きな緩やかなパーティ全体のフロウを楽しんでいた世代のクラバーからすると、ちょっと忙しく感じるところもあるにはあるっていう。それと2メニーDJsの場合、基調になるテンポが120から130でしょ。それをハーフにしたりとかっていう展開はほぼない。Iimoriくんの場合は、70っていうトラップ以降のテンポを持った曲を多用するし、そうなると、曲ごとのグルーヴが多種多様なんですよ。BPMが遅くなればなるほど、グルーヴのパターンは無限に近づいていくわけだから。だから、2メニーDJsよりもはるかに音楽的なんだよね。

      Qrionは現場でセットを観たのは一度きりで、あとは二つくらいオンラインのミックスを聴いただけなんだけど、IimoriくんよりもDJのスタイルとしてはベーシック。個々のトラックを和声の感覚からも捉えてたりして、ほぼ無調のビートだけのトラックから、少しずつ上物のメロディが際立っている曲に移行していって、和音の展開が際立っている曲にいって――みたいな流れがある。つまり、ハウスDJみたいに和声的なピッチの流れをきちんと意識してるし、ミニマルDJみたいにグルーヴをしっかりと積み立てていく。しかも、BPM130代半ばの流れのときに、BPM60半ばのアトランタ産のトラップやKOHHがミックスされたりするのね。

      だから、初めて彼女のセットで踊ったときは本当に大興奮でさ。グルーヴの変化や和声の変化でハッとさせる意外性もあるんだけど、基本的にはセット全体の中に緩やかなフロウがあって、音楽的にも彼女のテイストで一本筋が通っている。

      つまり、空間や時間の演出としても超一流だし、表現としてもしっかりと成り立ってるんだよね。

      全国津々浦々まわってるとさ、明らかに影響力あるのはそっちなんですよ。自称ロックDJのスタイルっていうのは、下手したらEDMの悪影響よりもひどいことになってるんじゃないかな。思ってるものが、気がつけばゴキブリみたいに増殖してて、それなりの影響力を持って、ある特定のおかしな常識や価値観を形成したりするっていうのは、言ってしまえばネトウヨみたいなもんじゃん。だからこそ、今の時代の特徴ーーすべてが分断してて、お互いに別物だと思ってて、そこには交通がまったくないーーについて考えちゃうんだよね。

      つまり、そういう風に思ってしまうのって、分断が何よりも問題になってる今の時代を象徴してるとも思うんですよ。そういうネガティヴな現象をさらりと無視するんじゃなくて、ごく冷静にきちんと指摘すべきだと思う。乱暴に説明すると、その頂点にいるのはダイノジの大谷ノブ彦くんとやついいちろうだくんだよね。

      ステージ上にダンサーがいて振り付けをつけたり、マイクを入れて、スリップノットがやっていたみたいにクラウドを一回座らせてジャンプさせたり。これがDJカルチャーなんだと思ってる人たちがどれだけ少なく見積もっても日本には10万人はいると思う。メカニズム的には、実際に戦争を経験した世代が亡くなっていって、それをいいことに一部の馬鹿が発した、日本は侵略のために戦争したわけじゃないんだっていう言説を鵜呑みにしてしまう若い世代が出てくることと同じ。大谷くんたちは本当に純粋な音楽愛から出発したんだと思う。今の時代にいたるところで起こっている問題というのは、たとえどこにも悪意がなくとも、そのせいでいつも間にかできあがってしまったシステムや常識に誰もが知らず知らずのうちに縛られてしまうってことじゃないですか。問題は制限を容認して、継続させ、いつの間にか助長させてしまう個々の人々の意識にこそある。SNOOZER〉のセットリストを隅から隅まで勉強してたような人なんですよ。ただ客観的に見れば、悪いのはすべて俺だということにもなる。自分のことをテクノDJ、もしくはハウスDJだと思ってるから。SNOOZER〉黎明期に、〈LOUD〉のトモヒラタくんに紙面上で名指しで批判されたことがあるんですよ。ロックは一曲の中にあらかじめ緩急があって、そこで完結しているから。リズムが揺れまくる生演奏のトラック使いながらBMPきっちり合わせて、グルーヴをキープしながら、グルーヴを積みあげていきながら、なんとか90分なり120分のセット全体で緩急をつけることはやってきた。俺が縦横のフェーダー使って、ブレイクを頻繁に入れたりするのはKAGAMIくんから盗んだスタイルだし。それをやるときはいつも彼と同じブースにあがったときのことが頭によぎる。ま、そんなの自分で自分に制約を設けてるだけの話だから、別に誰が指摘してくれなくても構わないんだけど。彼はすごく器用だから、特定のジャンル縛りでもDJができるし、いろいろジャンルをミックスすることもできる。それって自分自身がDJとしてずっと目指してることでもある。その彼が自分自身はある特定のジャンルのDJじゃないからあまりリスペクトされないみたいなことを言っていて。そういったスタイルがリスペクトされない感覚はすごくわかる。俺、極端な話、かける曲はなんだっていいと思ってるの。勿論、自分が好きでもない曲は死んでもかけないよ。選曲っていうのは、いい曲をかけるってことじゃない。どんな曲だろうが、前後の曲の連なりの中で、その曲が持ってる魅力を120%、もしくは200%アップで感じてもらえる流れを作るための1曲を選ぶってことなんです。だから、その連なりの中で90分なり、120分の緩急を作るための最適な曲をその時々に選ぶ、それが選曲だと思うんですよ。だからこそ、アンセムだったり、有名な曲というのは使うのが本当に難しい。曲としての記号性が高すぎるから、フロアのクラウドひとりひとりの記憶を刺激して、過剰な反応を及ぼす効果を持ってるから。しかも、その効果がひとりひとりによってバラバラだったりもする。だから、アンセムというのはパーティ全体のバイブスを一瞬にして破壊しちゃう可能性を持ってるんですよ。J-ロックのフェスはそういったDJカルチャーの伝統のすべてを見事にだいなしにしてしまった。Better〉っていうパーティの片平実くんっているよね。

      ROCKS〉っていうパーティを全国で開催し始めたんですよ。ROCKS〉が新宿リキッドルームでの人気パーティのひとつだったというのは聞いたことがあります。コンディはそういう仲の悪い音楽評論家たちを集めて、一緒にDJをやらせて、横の繋がりを作ろうとした。当時〈ロッキングオン〉にいた俺とか、大貫憲章さん、宮子和眞くん、有島博志さんなんかを集めて、オールジャンルのパーティをやることでね。

      順番に話していくと、自分には夜の世界の先輩が二人いるんですよ。だから、大貫さんは、ジャマイカのサウンドシステムからの伝統に連なる人なんですよ。曲間があくときだってあるし、マイクで喋りを入れる。そこからセレクターとディージェイのひとり二役をやってしまうっていう大貫さんしか出来ない独自のスタイルができあがった。乱暴に言うと、片平くんはマナブさんの系譜でもあるんですよ。bpmを合わせてミックスすることなしに全体のフロウを作れるDJなのね。

      正直、今の日本でロックDJと名乗っていいのは、彼ぐらいだと思う。ちろん、ほかにも頑張ってる子たちはいるにはいるんだけど。JAPAN〉っていう大きな現場に出ることで、次第にポピュリズムに流されてしまう。J-ロックのフェスでウケる日本のバンドの曲ばかりかけるようになる。彼が好きだったオアシスとかのUKロックでもなく、アメリカのオルタナでもなく、ルーディなロックでもなく、J-ロックをかけるDJになってしまう。呼んでた、あの不思議なカルチャーにすっかりスポイルされてしまった。 ――そういう世界もあるんだなっていう驚きはありますけど、完全に別世界の話のように感じるのが正直なところです。正直、これほど退廃したカルチャーはないとさえ思う。ただツギハギで、せわしないばかりで、グルーヴも何もあったもんじゃない。海外だったら、ブッキングの段階で出演者に一定額のギャラを支払うよね。

      彼らにとっては、イベントに来るお客さんが客がじゃなくて、出演者やイベンターが客だから。だから、ライヴハウスは箱代さえ払えば、簡単に貸してくれる。彼らはプロモーションを全然してくれないし、機材のレンタルはいくら、モニターのレンタルはいくらって、ひたすら経費だけを上積みしていく。90年代半ばのライヴハウスにはターンテーブルがないのが当たり前だった。DJ一人はDJバックとミキサーを担いで、もう一人はDJバックとCDJ-400を2台担いでいく。照明はあくびしながらやっているし、最初は本当に大変だった。今じゃ全国どんなライヴハウスでもミキサーとCDJがある。SNOOZER〉が始めたことでもあるから、これもすべて俺が悪いってことになりかねないんだけど、今ではバンドとDJが交互に出るパーティが全国にある。地元でバンドとDJを混ぜてやっているオーガナイザーが俺たちを呼んでくれたりするんだけど、俺がサウンドチェックしてると訊かれるんだよね。

      誰も知らないっていうだけだったから、説明すれば伝わる場合もあった。今は邦楽フェスから派生したDJカルチャーのあり方が常識として流通するようになってしまった。 おそらく今の日本に暮らす人々の大半にとってDJカルチャーの歴史なんて眼中にない ――そうなってくると、もはやどこから手を打っていいかわかりませんね。

      ま、こんなの、俺みたいな特殊な立場の人間だけが感じる憤りなのかもしれない。これって、今の日本が文化的に完璧にガラパゴス化して、伝統から切り離されていること、そしてそれをオリジナルだと胸を張って言い張る若い世代がいるのとまったく相似形だと思うの。それがいいことなのか悪いことなのか、俺にはわからない。だからこそ、俺にはすべてが同じ現象のように思えるんですよ。今の安倍政権が大日本帝国憲法を持ち出すのを不思議と思わない、どうしようもない無知な若者の感覚と同じ。悪意もなく、まったく無意識のうちに血の滲むような歴史を踏みにじっている。

      俺に言わせると、どれもこれも歴史に対する無知と、尊敬の念の欠如がもたらしてる惨状なんです。雑誌編集者としても、書き手としても、DJとしても。そういった立場からすると、社会的な意識を持った人たちが政治や経済システムの問題にメスを入れて、変革しようという意識が高まっている現状はすごく喜ばしいことだと思う。不特定多数の市井の人々の意識を培って、これから先の社会をよりよくしていく基盤を用意するのは文化なんだ、という事実がどうにも忘れられがちだと感じるんですよ。若い世代が10年前、20年前とは違う、歴史から切り離された文化の渦中に置かれたときに、それが当たり前と思ってしまう。具体的なシステムや法律以上に、文化は世の中の行く末を左右する効能を持ってる。おそらく今の日本に暮らす人々の大半にとってDJカルチャーの歴史なんて眼中にない。同時に、そうした歴史に連なっていると感じてる人たちは今の惨状は自分とは無関係だと思っている。

      だからこそ、かつての文化がどんな風に変節したか、その事実を知ること、それについて考えることというのは決して無駄ではないと思うんです。俺は批評家でもあるから、その時々の状況における壁のひび割れは全力で指摘しようとする。その言葉に説得力がなければ、誰も踊ってはくれないよ。だからこそ、当分の間、DJはやり続けるし、最高のDJには現場でもこうした場所でも最高の賛辞を捧げたい。朝になって、パーティが終わったら、どうなるかなんて考えない。特集期間中、FUZEがピックアップして定期的に再投稿していきます。

考察。「ケン・イシイ」とは何か?

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GGRYみんなの意見

  • ブルータス さん: 【回想】 openは重ためのテクノからsystem7のアンダー感溢れるサウンドからOrbitalへ以降、MEXICO BIT SUITEの個性溢れるナンバーからケンイシイのextraへと以降、相変わらずのカオスな選曲、精進します💦 pic.twitter.com/LmH1QcaU1A - 7 時間 30 分 31 秒前
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  • Yama⚡️⚡️⚡️ さん: RT @K_Ishii_70Drums: Ken Ishii ──ケンイシイが13年ぶりのニュー・アルバムをリリース、新曲を公開  | ケンイシイ | ele-king ele-king.net/news/006998/ via @___ele_king___ - 4 時間 59 分 5 秒前
  • GOLD象(ゴル象) さん: テクノ初体験はケンイシイのmixup vol.3 今聴いても最高ですね! - 11 時間 43 分 53 秒前
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  • まじめくん さん: ケンイシイって電通やったんか - 1 日と 46 分 45 秒前
  • katano toshihiko さん: ケンイシイと同じタイミングで成田にいたらしい(こちらはこれからタイ)。 - 1 日と 12 時間 46 分 25 秒前
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